”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

鉄道会社は何故に

私らの頭の中のセーフティーレバーはセキュリティーは
不審者を締め出して 私らの
私らの安心
は 最後の破裂は 明日の 天気予報 お買い得情報は
ふふ
安心なんてあるのか
ぶうぶう警報が鳴っている
鉄道会社は何故
一分一秒の安心を量り売りしてくれないのか
次世代自動列車制御装置を導入するのに
私は何万回この線を行ったりきたりして
定期券を更新すればいいのか

靴を踏まないでくれ
隣の男の爪が長く伸びて私のわき腹を刺す
みんなの吐き出す昏いオーラが大気に満ち満ちて
居場所がない どこにも
どこもかしこも敵だらけ
鉄道会社は何故
空気も量り売りしてくれないのか

格差はあってもいいんです
金持ちがいて貧乏人がいて
それでいんです
と言ってのける
恵まれたお家柄の政治家の皆さんが出てくるたびに
テレビの電源を消すのが面倒くさい
が 見たくもないのに
ワンセグだかなんだか
そこいら中で見せられて
鉄道会社は何故
逃げ場所を量り売りしてくれない

敵に囲まれて 敵しかいないのが世界
と知って
たちすくむ者をまた人は馬鹿と呼び非難する

つまらない話を大変だ大変だと
騒ぎ立てるヤツが私の気分を台無しにする
邪魔をする
この一仕事が終わればまた次の仕事が山となっている
私はできることならもうほっといて欲しい
鉄道会社は何故
静けさを安らかな無為を量り売りしてくれない

みんながいい と思うものを喜ぶ人と
みんながいい と思うからそれを喜ばない人と
これは事実上 別の惑星の住人である
鉄道会社は何故
人種別にコンパートメントを編成してくれない

大金持ちたちは頑丈な棺桶のようなものに居住して
一歩も外に出なくなればいい 移動もなにも棺桶ごとする
貧民は砂利を運ぶダンプの荷台に積み込まれけっこうな
未来に向かう 決算報告はネットでのみ開示される

媚びて揉み手をして愛想笑いして
付け届けに宴席接待 それでなんとかなった時代の
なんともかんとも楽で楽で楽だったこと
思わせぶりな言葉をひけらかせば学者だとか詩人だとか
それで喜ばれた時代の
なんともかんとも楽で楽で楽で楽であったこと

まだだろうか
何故に鉄道会社は他人の人生の時間を奪って
しかも金まで取ろうとする

正確に 正確でなければならない
高速に 高速でなければならない
何故に なければならない
何故か なければならない
ならない くれない 
何故か ならない
私らは 私の人生は
どうにも なんとも
ならない

何故か。


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