”辻元よしふみの世界”からあなたは帰れなくなるかもしれません。

哀れなニッポン

哀れなニッポン 辻元よしふみ

僕らの みんなの見守っているうちに死んでしまう
哀れなニッポン ニッポンは壊死して僕らは白けたまま
マウスをクリックし続ける クリックするたびに たくさん
精子が死んでしまう さよなら未来 哀れな
哀れなニッポンとニッポンジン

考えるということは面倒である 思わせぶりな言葉も要らない
僕らはどこかに行き着くところなんてあるんだろうか
漂流すら出来ない 腐った水槽で甲羅に籠もったまま絶命した
スッポンの子供を見たことがある あんな感じだ
どこに行くだって? どこにも行けやしない 淀んだまま
ぐずぐずと水は腐っていき 臭い泡だけが残る
哀れなニッポンの水没した後の 醜い波紋

少女たちのスカートが短すぎるために不潔な下着は路面に摩れて
毛羽立ち ある種のマニアの心を騒がし 警察の仕事が増える
電磁波の飛び交う空間で 自分探しに明け暮れる
やりとりされる大方の会話はそれかその変奏か
もちろん悪いことではない 通底コードではみな変換できること
そして 捕まらない限りは なにをしてもよいと教わった
へらず口をたたく間に法律は出来上がり だらしないシャツの
襟元からすえた体臭が漏れ出す パワープレイヤーを賞賛し
テレビカメラはなにも写し取らない 愚物は軽蔑すら理解できぬ
なんでもいいので増税し増税して増税だ それから
アジア大陸をがっしりと抑えてのける 不沈であるからには
時折の鳴動もいたしかたなし マグニチュードはでかくなる
太平洋は経済至上であるべきであり商圏は狭めてはならない
そんなこんなの説得 いいや言い逃れ 言い繕い
どうでもいい なんでもいい 属領には猿の総督で十分である
生活が成り立つうちに楽しみ 駄目になったら
死んでしまおうか みんなで
死んでしまおうか はて 今のほうがよほど世紀末に思える
ああ 哀れなニッポンの集団自殺は特設サイト上で募集中 

化膿性 そうだ 可能性ではなくて
選択肢はそれほどないことに気付けば慌てる必要もない
のんびりと詩作に耽っておられる幸運な人はそれで構わない
みんなが知らないうちに物事は決まっていく
黒い飛行機が雲の上を飛ぶ
舞浜地区ディズニーランド地下には米軍の最終防衛ラインがあり
太平洋の作戦区域をいかなる核攻撃下でも耐え抜いて指揮できる
もちろん与太話である ネタである 暇人どものオカズ
化膿性に満ち満ちた青春ども よろしい ニキビと性欲の日々だ
干潟のヘドロでカニが噴くあぶくを思わせる 本人なりの満足
尻に出来た腫れ物を潰しあって腐り落ちていけ 歓声を上げて
よく出来たアトラクションに長い列を作れ 見世物でも見ていろ
哀れなニッポンの愚物の多数意見 愚物の投票と欺瞞
愛とか やさしさとか まごころとか 馬鹿ども 誰の説教より嘘が多いのに どうせ何を言っても書いても分かりはしない

僕が試したダイエット薬品はこれで六種類目だ
順調に体重が減っていくのは嬉しいことだ
このままなくなってしまうまで
消え去ってしまうまで 哀れなニッポンの法定添加物と脂肪 

僕としちゃあ 六十行ぐらいで終わりにしたいと思っているが
編集者は三十行かそこらでいいのじゃないかと思うだろう
僕のスペース埋め草はせいぜい三分で読み飛ばして忘れることが出来るように工夫されている ここもそこも至るところそんなもの
カロリーが低いページを印刷するには予算が足りない 
誰がどう思おうがどうでもよくなってみると 道徳を説くような
善良な人たちの集まりから僕は外れすぎてしまった
どうせ誰も読みゃしないのだ
哀れな 哀れなニッポンの詩およびニッポンの詩人

どうでもいい なんでもいい 苛立ちすらもう失った
生活が成り立つうちに楽しみ 駄目になったら
死んでしまおうか みんなでだらしなくただ生きるぐらいなら
死んでしまおうか 次の世紀末までかなりあるから
同じフレーズ 埋め草だよ 埋め草に決まっているじゃないか
どこに行くだって? どこにも行けやしない 淀んだまま
ぐずぐずと水は腐っていき 臭い泡だけが残る
ほらまた見つけてしまった アナーキストとして自爆するほどの
必然性も残してくれていない なんて残酷 生殺しをする気か
さよなら コピーと貼り付けだけの詩 理由は見つけなくていい
さよなら未来 哀れな
哀れなニッポンとニッポンジン
と僕の言葉。


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